1. 老兵は死なず、ただチキンを運ぶ。」――73歳正社員ドライバーが味わう、物流の熱狂と冬の冷たさ。

動画のニュースキャスターが、涼しい顔で「個人消費が回復基調だと」を告げています。 その声を、私は凍てつく早朝のキャビンで、湿布を貼った腰をさすりながら

スマホから聞いていました。

御年73歳。世間が「人生100年時代」と浮かれる一方で、私の現実は「人生2トン車時代」の真っ只中です。

「消費の復活? ああ、この荷台の重さがすべてを物語っているよ……」

人が足りないから働いているのか、働きたいからここにいるのか。 意気込みと、少しの諦め。そして、どうしても隠せない「老い」という名の誤謬。 今日は、一人の老兵ドライバーの視点から、日本経済の「今」を少しだけ泥臭く語らせてください。

12月のKFC(ケンタッキー)納品は、もはや喜劇です。 普段の2.5倍という殺人的な物量。本部の計算では「入るはず」の荷物が、どう見ても2トン車の容積を超えています。「物理的に無理だろ」と毒づきながら、テトリスのように箱を詰め込む。この「現場の計算違い」こそが、消費が爆発している何よりの証拠です。

店に着けば、活気あふれる若者たちが声を張り上げている。 その眩しさに、ふと「自分も昔はあんなふうに動けたな」と、胸の奥が少しだけチクリと痛むのです。

2. 「衛星商権」――ただの運転手で終わりたくない、最後の悪あがき

「高齢ドライバーなんて、言われた通りに走るだけだ」と思われたくない。 私たちは、大手の下請けに甘んじるのをやめ、独自の「衛星商権」を築きました。

地方の拠点をハブにし、郵便局や小規模店を一日2回、緻密に回る。この効率的な仕組みは、ニュースで言われる「サプライチェーンの再興」なんて高尚な言葉よりもずっと、私たちの生活に直結しています。 「俺たちのルートが、この街の経済を回している」 その自負だけが、冷え切ったハンドルを握る手に力を与えてくれます。

3. 73歳、正社員。「帳尻合わせ」の裏にある涙

「人手不足だから、辞めさせてもらえないんだよ」 そう自嘲気味に笑うこともあります。実際、周りを見渡せばパートさんは減り、気づけば私が最高齢。重い荷物を持った時、膝が「パキッ」と鳴るたびに、情けなさと悲哀がこみ上げます。

けれど、トラブルが起きた時、最後に頼られるのは私の「経験」です。 渋滞を読み、遅れを取り戻し、ロスタイムを魔法のように消し去る。 会社が私を「正社員」として雇用し続けるのは、単なる慈悲ではありません。この「帳尻合わせ」という職人芸に、確かな収益価値があるからです。

意気込みだけで体は動かない。けれど、悲哀だけでハンドルは回せない。 その両方を抱えながら、私は今日も2トンの積荷と共に、日本の消費の最前線を走っています。

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