2026年6月。保冷車のフロントガラス越しに、福島の初夏の瑞々しい緑が鮮やかに映る季節となりました。現在74歳、物流の最前線で現役トラックドライバーとしてハンドルを握り続ける私にとって、最近ニュースで行き交う「AIの急速な進化」や破壊的イノベーションの話題は、決して海の向こうや遠い研究室の中だけの話ではありません。
今、アメリカを中心に「AI導入によるホワイトカラーの職務削減」や「一括した採用抑制」の動きが加速しているといいます。しかし、ここ福島の物流現場、特に私が毎日向き合っている冷凍食品配送やネットスーパーの現場から見える景色は、それとは少し異なります。今回は、AIという巨大なテクノロジーの波を前に、私たちがいかにして「飲み込まれる側」ではなく「乗りこなす側」へ回るべきか、70代の現役ドライバーとしてのリアルな日誌と視点から、3000字程度のボリュームでじっくりと紐解いてみたいと思います。

1. 「仕事が奪われる」のではない、「救世主」を待っているのだ
世間では「AIに仕事を奪われる」「人間の居場所がなくなる」という不安や脅威の論調が根強く聞かれます。しかし、私たちの配送現場が直面しているのは、皮肉なことに「そもそも仕事を奪ってくれる人間すら現場にいない」という深刻な人手不足、いわば「静かな嵐」の真っ只中という現実です。
私の所属する運送会社は、主に大手冷凍食品会社の二次請けとして、ケンタッキー・フライド・チキンやモスバーガーといった大手外食チェーン、あるいは地域の食品スーパーへ冷蔵食材や包材を日々届けています。朝5時、凍えるような冷凍倉庫から霜の降りた段ボールを引っ張り出し、一般道路を伝って各店舗へ道順通りに確実に納品していく作業は、絵に描いたような肉体労働であり、緻密な時間管理が求められる現場です。
さらに午前9時を過ぎると、今度は大手スーパーマーケットが展開する「ネットショップ(ネットスーパー)」の配送業務という、別の過酷なミッションが始まります。かつて、このネットショップの荷造り部屋や積み込み現場には、地域から集まった活気あふれる「パートのおばちゃん」たちが大勢いました。彼女たちは互いに声を掛け合い、息の合ったチームワークで山のような注文商品をテキパキと仕分け、独自の通い箱へと収納していました。
しかし今や、どれだけ求人広告を出しても新しい人は集まりません。現場に残された少数のスタッフとドライバーが、「気合と根性の奮戦」で何とか毎日の配送スケジュールを維持しているのが実情です。
このような極限状態の現場において、ルートの最適化や煩雑な事務作業、ルーティン化された仕分け入力をAIが代替してくれるとしたらどうでしょうか。それは私たちにとって脅威などではなく、現場の崩壊を食い止める「救世主」の到来そのものなのです。
アメリカの先進企業で起きている「採用抑制」という冷徹な効率化の波は、日本の地方都市においては、この「労働力不足の穴を埋める」という切実なニーズとして裏返しの形で現れています。つまり、AIを単に「人間の雇用を脅かすコスト削減の道具」と捉えて怯えるか、あるいは「現場を共に維持してくれる頼もしい相棒」として歓迎するか。この捉え方の違いこそが、これからの激動の時代を生き抜く最初の分水嶺になります。
2. AI時代の2つの道:あなたは「武器」にするか、「代替」されるか
AIが社会のあらゆるインフラに組み込まれていくこれからの時代、私たちの前には大きく分けて2つの生き残り戦術、あるいは進むべき道が横たわっています。
① AIを武器にする(乗りこなす)道:身体の拡張と学びの場
私は今年で74歳になりますが、偶然にも正社員として現在の運送会社に雇ってもらうことができました。この年齢で新しいテクノロジーについていくのは無理だと諦めるのは簡単ですが、私は自分の運転席をひとつの「実験室」だと考えています。
例えば、配送中の孤独で長い移動時間を、私はスマートフォンの「文字読み上げ機能」を駆使することで、最新のビジネス論やAIの動向を耳で学ぶ「動く学習空間(キャンパス)」へと変貌させています。
(オーディオブック): 「耳で学ぶ」というライフスタイルを実体現している私のおススメ⇒Audible
「74歳の現役ドライバーが、運転中の耳学習でAI知識を身につけた」⇒kindle Unlimited
また、前手順として商品の仕上がり(箱のカウント)や配送用連絡ノートの数字を照合する際、確認した配送先の一覧表をスマートフォンのカメラで即座に撮影し、仲間のドライバーたちと情報をデジタル共有するルーティンも確立しています。
これは、AIやデジタル技術を「自分から仕事を奪い合うライバル」として遠ざけるのではなく、衰えゆく自身の身体機能や知的能力を補い、拡張してくれる「デジタル・バディ(相棒)」として定義し直す試みです。
スマートスピーカー「まさに家の中の相棒です」😊⇒Echo Dot・Google Nest Mini
このようにテクノロジーを自らの武器として組み込むことができれば、年齢や環境に関係なく、自らの労働価値を維持し、高め続ける「乗りこなす人」になることができます。
② AIに取って代わられる(飲み込まれる)道:変化の拒絶と居場所の喪失
一方で、過去の成功体験や従来の慣れ親しんだスキルだけに固執し、「新しいやり方」を受け入れる変化を拒めば、どれほど高い実績を持つ人間であってもAIによる自動化の波に抗うことは困難になります。
ネットショップの現場でも、管理事務所にはマネージャーと呼ばれる男性が1名おり、売り場からのヘルプを交えながらパソコンへのデータ入力や管理を行っていますが、もしこうした管理業務や事務連携、配送ルートの選定作業において「今までのやり方が一番確実だから」と頑なにデジタル等の変化を拒み続ければ、システム全体を効率化したい企業側からは「ボトルネック(足枷)」とみなされてしまいます。最悪の場合、AI導入を優先するドラスティックな経営判断の波に飲まれ、本人の意思に関わらず居場所を失っていくことになります。このリスクは、現場のドライバーであっても、オフィスのホワイトカラーであっても、本質的には全く同じなのです。
スマートフォン・格安SIMの通信回線「ポケットの中のスマホ」が重要な役割を果たしているためです。「最新技術やAIを試すなら、まずは通信費を抑えて環境を整えることが第一歩」⇒ahamo・UQ mobile
3. AIには真似できない、人間に宿る「2つの絶対的価値」
では、私たちはAIにすべてを譲り渡さなければならないのでしょうか。決してそんなことはありません。経営学の知見などでも指摘されている通り、これからの時代は「計算機には代替できない、人間にしか生み出せない独自の価値」をどれだけ発揮できるかが、個人の市場価値を決定づけます。
私が毎日の泥臭い配送ルートの中で、汗を流しながら実感している「人間に宿る2つの絶対的価値」についてお話しします。
① 身体に刻まれた「暗黙知」の力
AIの性能は、投入する計算資源やデータ量が大きくなればなるほど爆発的に向上するという「スケーリング則(規模の法則)」に従います。しかし、現実の物流現場には、どれほど高度なセンサーを並べても決してデータ化・言語化できない、人間の身体に深く刻まれた「暗黙知」が厳然として存在します。
例えば、朝一番の倉庫作業で、カチコチに凍りついた極めて重量のある冷凍食品の箱を大量にトラックへ積み込む瞬間がそうです。若手ドライバーは経験則を無視し、往々にして力任せに持ち上げようとし、あっという間に体力を消耗したり、腰を痛めてしまったりします。
一方で、74歳の私はといえば、決して無理な力は使いません。経験から得た身体感覚で、「荷物の重心がどこにあるか」を瞬時に見極め、「てこの原理」を利用して自分の体幹と連動させることで、最小限のエネルギーで軽々と、かつ安全に荷物を動かすコツを体得しています。雪道や凍結した路面で、タイヤのグリップ力を足の裏で感じ取りながらブレーキを踏み分ける繊細な感覚も同様です。こうした、生身の身体を通じた試行錯誤と時間の堆積によってのみ得られる「直感」や「コツ」は、データだけで学習するAIには容易に真似ができない、人間だけの圧倒的なオリジナリティです。
② 相手の気持ちを汲み取る「人間性(共感力)」というインフラ
どれほどAIが渋滞を回避する完璧な配送ルートを算出し、時間通りの運行を設計したとしても、その末端にある現場を実際に動かし、円滑に回しているのは「血の通った人間同士の繋がり」です。
ネットスーパーの午前中の配送には、郵便局の物流センターへ「午前11時まで」に絶対に届けなければならないという、極めて厳しい時間制限が存在します。もし時間ギリギリの注文が舞い込んだり、商品の出来上がりが遅れたりして、大型店舗を出発するのが9時50分を過ぎてしまった場合、物理的に遅配のリスクが跳ね上がります。間に合わせるために高速道路で無理にスピードを上げれば、自らの命や周囲を巻き込む事故のリスクを高めてしまいます。
そんなギリギリの精神状態で殺気立ちやすい繁忙期の現場において、ドライバーが焦りや怒りを剥き出しにすれば、現場の空気は余計に悪化し、作業ミスを誘発します。だからこそ私は、どんなに時間が逼迫していても、納品先の郵便局の受付や店舗のスタッフに対して、あえて穏やかな笑顔で「いつもありがとうございます」「今日は少し荷物が遅れちゃってすみません。」と、相手を気遣う一言を忘れないようにしています。
冷たい雨の日や猛吹雪の雪道の中、凍える手で荷物を届けた際に交わされる「大変だったね、本当にありがとう」という温かい声掛け。そして、日頃から納品先の受付で「何かと便宜を図ってもらえるよう」に積み重ねていく、丁寧で誠実な挨拶。これらは単なるマナーではなく、トラブルが起きた際に「お互い様だから」と融通を利かせ合い、滞りがちな物流を現場レベルで救うための強力な「潤滑油」であり「抑止力」なのです。相手の表情や仕草から瞬時にその場の空気を察し、気持ちを汲み取る「共感力」と「人間性」こそが、自動化が進むAI時代において、最も希少で、最も高い価値を持つスキルになるのだと確信しています。
結びに:未来へのハンドルを、自ら握るために
AIという巨大な進化の波は、今後私たちの想像を超えるスピードで社会の仕組みを塗り替えていくでしょう。その変化を前にして、最も危ういのは「自分は雇われている身だから」「もう高齢だから」と、思考を停止して立ち止まってしまうことです。
大切なのは、誰かに自分の居場所を決めてもらう「雇われる感覚」を捨て、今日から「この新しい技術を、自分の人生や仕事にどう組み込んで、どう遊んでやろうか」と、主主体的に問い続ける姿勢です。
74歳の私が、毎日の配送で軋む腰をストレッチで丁寧になだめ、若者に混じって泥臭く働きながらも、スマートフォンの音声で最新のAI論を耳から学び続けている理由。それは、自分の人生という車の「未来へのハンドル」を、AIという不確実な波や、他人の手に決して渡したくないからです。
デジタル技術を恐れる必要はありません。皆さんも、まずは明日、ポケットの中にあるスマートフォンのAIアシスタントに向かって、「おはよう、今日の天気を教えて」と、少しも照れずに話しかけることから始めてみませんか?
それは本当に小さな一歩に過ぎません。しかしその一歩こそが、AIという巨大な潮流に飲み込まれることなく、まるで「デジタルサーフィン」のように変化を楽しみながら人生を乗りこなしていくための、新しくて輝かしい習慣の始まりになるはずです。
ビジネススキル系通信講座・学習プラットフォーム「AI時代を生き残るための学び」👍⇒ Udemy
想像以上に明るくて血の通った未来は、あなたのその小さな一歩の先に、確かに待っています。

コメント